あらさがし

ブログは続かないタイプです。溢れすぎたときに書きます。

実写映画『心が叫びたがってるんだ。』おかわりのススメ

実写映画『心が叫びたがってるんだ。』を2回観てきました。

※3回目を観て、少し追記修正しました

 

主演4人の演技がすっと入ってきて、じんわりと沁みるお話。

いつもは坂上拓実役の中島健人くんにキャーキャー言ってるはずなのに、そんなのすっかり忘れて素朴な拓実を拓実だと思って観ていましたし、順役の芳根京子ちゃんは感情移入させるならピカイチの演技。完全に順目線で話を追っていたのでラスト近くなって「そっち!!!!!?」と心で叫びました。

菜月役の石井杏奈ちゃんは、きっとその要素があるからこそのキャスティングだと思うのですが、こういう悪意なく根っから気持ちのいい子たしかにいた…!って学生時代を思い出したし、大樹役の寛一郎くんはまだ撮影1,2作目?とかなはずなのになんの違和感もなく、そのまんま野球部の大樹。正直、演技浮いちゃってたりしないかな、なんて勝手に心配していたけど、素直にいいヤツだって思いながら観れました。

エンドロールが始まって、そこで一息したときに「ふわぁあぁ~~……」っと入ってくる、そんな素敵な作品でした。

 

でも、1回目は見ている最中どこかぼんやりしている部分もあって。

繋がってはいるんです。「何で知ってんの?」とか「何でここにいるの?」とか、「何でこのタイミングで来るの?」とか、そういう"ねえこれで騙せると思った?"(性悪)みたいなのは一切ないんです。本当に、ひとつひとつに意味を持たせて丁寧に繋げているのがわかります。もともと2時間のアニメを2時間で実写したわけですし、話に無理があるということも感じませんし、実写として不自然な設定もありません。

ただ、登場人物の感情の変化だったり、ストーリーにない時間(行間を読む的な)だったり…素晴らしく一瞬ごとの情報量が多いので、拾いきれていなかったんです。

ま、私の理解力の話なんですけど…!

そういうところに「やっぱり!」と思えたり、(勝手に)深読みして存分に楽しめたのが2回目のここさけでした。

 

 

とにかく、ぎゅっといろいろな要素が密度高く繋がっている作品だったので、同じように拾いきれなかったな、気付いたのは終わってからだな、というお方はぜひ2回目がおすすめです!!!!!

と、言いたいだけの話なのですが、おかわりここさけで見つけたことをいつか答え合わせしてスッキリするために(?)備忘録として感想などなどを残しておきたいと思います。

えっここ1回目観てる時に気付かなかったの…?という意見も当然あるかと思いますし、わたしの解釈と全然違う!!とか、こんなの浅い!!って言うのもあるかと思います。

このブログを読んで確かめたいと思ったり、自分なりにもう一度深く考えながら見てみたいとか、1回目で気付いてたし!という対抗心を燃やしたり(?)、結果おかわりここさけしてみようかな!なんて思ってもらえたら…たいへんおこがましいですけど微力でも素敵な作品に出会えた恩返しができるかな、と。


そして原作のアニメ版を見ていないので、「そんなのアニメ版の時からそう言う作品なんです」と言われたら申し訳ないのですが、、、ひとつの実写映画としての感想として受け取っていただければ幸いです。

まだ観ていない方はこの先ご注意ください!

 

(↓パンフレットにはこんな素敵な仕掛けも!)

 

<もくじ> 

 

拓実の本心

下駄箱の前で野球部の後輩くんたちが大樹の悪口を言っているのを目撃した拓実たち。菜月は「言いたいことがあるならハッキリ言えばいいのに…」と本心を漏らします。そして微笑みながら菜月を見つめる拓実。

…あぁきっと、拓実は菜月のこういうところが中学の頃から好きだったんだぁ〜〜〜!!

正直、隣でにやにやする拓実の真意は1回目が終わった後に「あのシーン、本心はただ"懐かしい"だけじゃなかったのか!!」と気付いたのですが、2回目はその後の4人のすれ違いの過程に想いを馳せて(?)ぎゅんぎゅんしながらその微笑みを見ていました。

 

それまでどことなく気まずい雰囲気だった拓実と菜月。

チア部の仲良し2人に「菜月は坂上なんか相手にしないよね〜」なんて言われて複雑な表情をしていたので、まだ拓実のことが好きな菜月の気持ちは1回目のその場で気付きましたが、完全に順と同じ気持ちになっていたので拓実の思わせぶりな態度にやられていた私。

視聴覚室で確信を得るまで「え?拓実と順は両想いなの??失恋映画なんだよね??どういうこと??」と、ニブイヒト状態。

だから、当然なんですけど2回目でちゃんと見ると順を気にかける姿はあまりにも自然すぎて辛辣。後ろで流れている音楽も含めて、もちろん拓実から順への恋心は描かれていなかった…。逆に気付くのは菜月に対して男らしく振る舞おうとする全くスマートではない拓実の姿。

つまり、だから拓実そういうとこ!!!!!!!!!!!!順が思い出す拓実がどれだけ自然で素敵か知ってる!?!?!?!?

 

そして、拓実は菜月のチアガールズに「菜月は相手にしないよね」なんて、そんなこと言われちゃうくらいクラスの中でも地味キャラ。拓実自身も本心は隠して(?)中学時代のことを「気にしてない」なんて言っちゃうし、今の心持ちを考えると菜月が自分のことを気にかけているなんてこれっぽっちも思ってもいないんだろうな〜〜。

 

菜月の期待

2回目でやっと、菜月側の気持ちにもなって見ることができました。

1回目は順のことを何でもわかる拓実の姿を見せつけられ、これからは応援する!なんて言っていたものの、拓実を避ける菜月に少し違和感。

もちろん決定打は、拓実が順にミュージカル最後の曲「悲愴」と「Over the Rainbow」を同時に歌うことを提案しているときで、音楽室の2人を見たときに、順のキラキラした表情で確信するわけですが…。(2人の顔にあたる夕日もとても印象的)

その光景にもやもやして、これ以上関わると危険、つらい。と思って避けるのは、もちろん拓実に「順が好き」なんて言われちゃったら耐えられないから話したくない、のかと思ったのですが…だったら菜月が「坂上くんの気持ちがわからない」って言うのは今さら中学の時のこと?それで避ける?と。ここまでが1回目で理解できた範囲。2回目でやっとストンと落ちました。

上記の拓実にニヤニヤ(にこにこ)と見つめられたことだったり、「仁藤はいい子ぶってる」と大樹にひどいことを言われたとき、珍しく言い返してくれたり、両親の離婚の原因を今さら教えてくれたり、菜月だって拓実に期待しちゃう部分はわりとあったな、と。

拓実がおつかいのコンビニから帰るとき、順に感化されて話した両親の離婚について「なんで俺、仁藤にあんな話したんだろう?」なんて呟いていますけど、菜月だってきっと思ってるさ!!

でも、菜月からしたらほとんどのことが順きっかけだし順が結末だし。これじゃあ自信なんて持てない………ムダな期待はしちゃだめだってもやもやするのも納得。つらい。

 

大樹の向う脛

とりあえず、彼にはキャプテンの三嶋くんがいてくれてよかった~!!!

2回目は、怪我して絶望していじけてる大樹に、最初から最後まで裏切らないだろう味方がいてくれたのが救いだな…って思いながら見ました。(拓実の「拓ちゃ~ん」と慕ってくれるDTM研究部の王子代役・岩木くんと相沢くん、菜月のチアガールズ・明日香と陽子もそうですが!)

大樹の順への片想いについては、そもそも大樹がとってもまっすぐに一生懸命やってきた人だと思うので、まっすぐで一生懸命な順を好きになるのはとても自然なこととしてストンと入ってきました。

ファミレスの件がホームランなんだとは思いますが、配役について王子様役で不安がる拓実に対して、大樹が「俺なんて玉子だぞ!」なんて脚本を書いた順の前で言ってしまったこと、順は怒りもせず変に気にもせず、ただ覚えていて「ミュージカルのタイトルを考えてほしい」なんて言ってくれる優しさ。

あと、ミュージカルの内容と全然違う「青春の向う脛」というタイトル。弁慶の泣き所なんて言われるくらいぶつけるとすごく痛い場所が青春にはあって、怪我をして青春を離脱しかけた大樹はそれを日々感じていたんだろうな、なんて思いました。終盤で"歌えない"といなくなってしまった順を想って「このままだと全部、成瀬のせいになるんだぞ!!!」って拓実に詰め寄る大樹が正に。だから、その大樹のタイトルについて感覚的に察知した順は大拍手だったんじゃないかなって思うと、ほんと、順もたいがい拓実のこと言えない…!!

あと、すんごく気持ち悪い憶測なんですけど…大樹と菜月は、拓実と順を応援しようって話している気がしました。(お互いに自分の本心を言ったかいないかはわかりませんが)そう思うと、視聴覚室に向かう拓実と菜月の姿を見て追いかけさせたのかな…なんて。仁藤なら上手いことやってくれるだろうと。そんなことも考えていた2回目でした。

ちなみに、ドルオタ目線としては、そんなタイトルでミュージカル上演されたら、素人の高校生たちが本番に向けて準備期間も一生懸命やってきたことも含めてまるっと愛しくなってしまいます。

 

順の音楽

順の気持ちはことごとくBGMとリンクしていました。話せない分、こういうところで最大限に表現していたんだ…って冷静に聴けた2回目。

まず、順の拓実への気持ちが芽生えた瞬間。わたしの心が読める坂上拓実くんが「歌なら呪いとか関係ないかもしれないし」と言って、最寄りのバス停で降りました。

そして、バスの窓越しに坂上拓実くんの背中を見ているときの、、、音楽ですよ、、、ほんと、私も坂上拓実くんの背中を見て好きになってしまうくらい(好き)、「あ。順ちゃん芽生えた、、、」ってじんわり。この時はまだ順に自覚はないかもしれないけど、、、

そして、王子様の嬉しい言葉で満たされた時もそうですけど、お祭りのときにきっぱりと「それは玉子の呪いじゃない」「だって悪い言葉は捧げてないだろ?」と否定してくれた「坂上拓実」を、玉子に捧げるBeautiful Wordsにしたときも、、、そ、そのときの音楽~!!!確信〜!!!

ただ何よりも、極め付けが、、、拓実の菜月への告白を聞いた後、校門で歌えなくなってうずくまる順をズームアウトしていくときにわあっと流れるピアノの音、、、私はここで涙腺決壊しました、、、

ぜひ、おかわりしたらサントラも併せてどうぞ…

そのあと、ママは泊りの会社研修でいなかったから、誰にも気付かれず、順は制服のままはじまりの場所・お山の上のお城に行ったんですね、、、ひとりで絶望のなか一晩を過ごした訳です…つらい…。

でも、、、そこから順は言葉が話せるようになります。ココこそ「なぜ?」って感じもするけど、2回目を見て、今まで自分の一番の過ちに「言葉を封印する呪い」で罰を課して保っていた順は、いつの間にか拓実への恋心(拓実からもらった「歌」)で満たされていて、そっちの方が大きく膨らんでいたんだな、と。その恋が散ったとき、課すべき罰は「言葉の封印」ではなく、新しい人生最大の辛い出来事となった恋にちなんだもの。つまり「歌の封印」こそ順が自分自身に課すべき罰になったんだな、と解釈しました。歌えなくて本番出れないなんて、順にとっても本当に最悪です。

でも、順を見つけ出した拓実と正面から向き合って、言いたかったことを言って、呪いが解けて言葉も歌も取り戻した順はとても強くなりました。(ここも夕日が印象的でした)

「≪最高の失恋≫はあなたをきっと強くする」と言うキャッチコピー、こんなに素敵なのに公開前から強豪ぞろいの2017年の夏休み映画の中でとてつもなく弱いキャッチコピーだぞ…と震えていたのですが、最後にちゃんと回収されるんだからさすがでした。見くびってごめんなさい。キラキラとインパクトのある映画が流行る昨今…最高の失恋って言われても…弱いけど…好きです…。

 

そのあとは、言わずもがな。今度は、BGMに頼らず、順の「言葉」を「歌」にしてきちんと伝えられた途中参加のミュージカル本番。それまで歌の練習シーンが無かったのもずるいですね!!!

 

順ママ・泉の孤独

正直、娘がこの状態だったら相当つらいじゃないですか…。順のママ・泉を演じる大塚寧々さん、すこぶるキレイなのに、全身でつらい…。

そんなとき、きっと何か事情があるんだろうな、っていう感じの保険のお客さん・坂上家との交流ですよ。順と同い年のお孫さんがいて、おじいちゃんとおばあちゃんと暮らしているお家。でも、見た通り、根っからのいい人たち。わかってはいるけど、坂上夫妻に順ママは「娘はよくしゃべる今どきの女の子」と見栄と張ります。

順ママにとっては、嘘をついているからこそ、余計に心が読まれていそうな坂上家は苦手な存在なのかな?なんて感じました。

で、ミュージカルを見に来た順のママは、拓実のおばあちゃんに声をかけられて隣に座ります。その時、なぜかナチュラルに渡された季節外れの"みかん"。

1回目に見た時は、ん?みかん?おばちゃんの飴ちゃんみたいな?と謎だらけだったのですが、2回目では、その前のどこかの成瀬家シーンで、台所のカウンターに"みかん"が2個並んでいたの気付きました(ありましたよね…?)

ああああ…おばあちゃん、もしかしたらいつも成瀬さんがお家に来てくれると"みかん"渡してるんじゃないかな、って。いつも通り、渡された"みかん"だったんだ~~

順ママにとっても、あの坂上くんのおじいちゃんとおばあちゃんは拠り所と言うか、ちょっと特別なお客さんになりつつあったのかな?だからすぐに食べずに置いてあったのかな?なんて勝手に思いました。

 

そして、お家に成瀬さんという女の子が来たときに、拓実はお茶を出しに来たおばあちゃんを部屋から追い出したけど、おばあちゃんは順が成瀬さんの娘だと気付いたんですね。だから、ミュージカルで隣の席に呼んだわけだし、順の事情も察していたからこそ、順ママが順のいないミュージカルの内容に耐えられず帰ろうとしたとき、引き留めてたわけですね!!すっきり!

 

※3回目ここさけ後、追記

キッチンカウンターに"みかん"が2個あったのは、順ママが坂上家で初めて拓実と会った日と、順にミュージカルを観に行くことを約束した日でした。

坂上さんのおばあちゃんに会うと"みかん"が貰える法則なら、順にミュージカルを観に行く約束をした日も坂上家に訪問しているはず。

順が坂上家に来たことや、生き生きしている拓実の様子を坂上さんのおばあちゃんは順ママに教えていたかもしれないですね…!?

からの、「行けるように頑張るから!」と言うことでしょうか??

そして、ミュージカルを途中で退席しようとしたとき、順ママを諭す坂上夫妻はもうすでに事情は知っている雰囲気。これは、ミュージカルの内容で察したからなのか…?「行けるように頑張るから!」の日に、ママが坂上家で順のことを全てお話ししていたからなのか…?とかも思いました。

 

城嶋先生の奇跡

荒川良々さん演じる先生・嶋っちょ。こんな先生いいなぁ〜!って思って観ていました。

そして、ミュージカルで奇跡、いっぱい起きてましたね!!(雑)

1回目、2回目関係なくただの感想ですが、最後に嶋っちょが仕掛けた、ミュージカルの物語の途中でキャスト交代という「YOU出ちゃいなよ」的な奇跡が一番好きでした。

少女の声が出なくなったところから、客席から登場したマントを着ている少女に入れ替わる。

そしてママを見つけた順は本心から「わたしの声」という言葉を歌で届けました。私が観客だったら「演技上手いな…きっとそういう演出なんだな…」って思ってしまいます。お見事でした。

 

 

 

 

と言うわけで、2回目(と3回目)を見た感想でした。1回だけでは気付かないこと多かったんだなぁというのがまじまじとわかりました!!!

キャストや熊澤尚人監督をはじめ、脚本や音楽などなど、携わった全員がこだわって作ったことが伝わってきますし、2回目、3回目も新たな発見ができる密度の濃い素敵な映画なんだな、きっと人それぞれ解釈があって、それぞれが楽しめる作品なんだろうな、って思います。

 

さあ、日付が変わって水曜日はレディースデー。

仕事終わりに3回目のおかわりここさけ行ってきます!!!!!!!!!!!(行って来ました)

 

 

オマケ

キャストがふざけて『心が叫びたがってるんだ。2』なんて言っていましたけど、こういうオタク的な楽しみ方もできる作品ですよね(?)

パンフレットを読んだら監督も似たようなことおっしゃっていてにんまり。